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【書籍レビューーファイナンス】円高の正体 (光文社新書) [新書] 安達誠司 (著)

円高の正体 (光文社新書) [新書] 安達誠司 (著)

 

(書名・画像はamazon様へのリンクになっています)

 

【簡単な感想・購入動機】

 

藤忍さんのブログ「円のゆくえを問いなおす」 - ナゼ為替の良書は新書が多いのか?で紹介されていた.今現在の円高問題を考えるベースにもなると思いチョイス.

(2023/08/16リンク切れを確認)

 

為替の本にしては読みやすいほうだと思います.ただし為替の本は,それぞれの本でいいたいことがかなり分かれるようなので何冊か読みたいところ.

 

本書での結論は,円高の正体は日銀のマネタリーベース供給量が少ないことが原因としている.

そのためには実際にマネタリーベースを供給後,修正ソロスチャートに従い円安方向向かい,名目経済成長率がマッカラムルールのいうとおり上昇するという流れになる必要がある.

 

この流れから,現在の日銀のマネタリーベース供給量がどのように,何を理由に決定しているのか気になるところ.また,マネタリーベースの供給量が増えても銀行が企業への貸し付け,活発な投資活動を起こさなければならないので,その部分の対策も必要となるのではないでしょうか.

 

【内容のまとめ】

 

第1章 為替とは何か?

 

第2章 円高・円安とは何か?

 

第3章 「良い円高」論のウソ

 

イギリスがユーロに加入していない理由

ポンド危機以降,イギリスはERMから離脱し,変動相場制を採用する国になりました.欧州最大規模の経済を誇るイギリスが,ユーロに加入していないのはそのためです.

P.84

 

「不整合な三角関係」とは,「金融政策を自由に行いたい」,「為替レートを固定したい」,「為替市場に誰もが自由に参加できるようにしたい」という政府の3つの目的のうち,同時に達成できるのは2つだけ

P.84

参考:Wikipedia国際金融のトリレンマ

 

第4章 為替レートはどのように動くのか?

 

購買力平価と実際の為替レートの動きは正確には一致しているとは言いがたいのですが,おおよそのトレンドは示していると言えます.

P.120

 

ソロスチャートが比較的実際のドル/円レートの短期的な動きを捕捉できていることがわかります.

P.124

参考:ソロスチャート

 

超過準備を日本のマネタリーベースの中の日銀当座預金から差し引いてソロスチャートを修正すると,ソロスチャートの有効性が復活したのです.

P.132

→これが修正ソロスチャート

 

第5章 為替レートは何が動かすのか?

 

第6章 円高の正体,そしてデフレの”真の”正体

 

企業の売り上げが年々減りつづけるかたちで名目GDPが減少しつづける現在の日本の不況は,デフレが引き起こしている部分が多大にあるのです.

P.176

 

「日本は今後もデフレが続くだろうという予想」こそがすなわち,本書でたびたび問題として取り上げてきた,円高をもたらす「予想インフレ率の低下」=「デフレ予想の定着」であるわけです.

P.181

 

マッカラム・ルールから

必要なマネタリーベース供給量は名目経済成長率2%で150兆円,4%で200兆円.現在は121.2兆円なので,さらに必要なマネタリーベースはそれぞれ28.8兆円,78.8兆円

 

日本の長年にわたる低成長は,日銀が適切なマネタリーベースの供給を怠っていたために生じているということなのです.

P.187