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【書籍レビュー-知的財産】ある知財法学者の軌跡 (2022/5/2)

知的財産関係の法学者として、著名な中山先生の法学者としての人生と、その門下生の方々とのQ&Aが書かれている。

 
私は理系出身の弁理士で、弁理士試験の勉強の中でお名前を知った程度でしたが著名な先生であるこはその勉強の中でもわかりました。
 
学問としての法律の研究というものがどういうものであるか、非常に興味があり読みました。

 

 
 
目次

 

1.学者としての生き方

法学者とは、実務者とはどう違うのかといったことには、非常に興味がありました。
 
実務家とはいえ、学者、実務家を問わず論文等に目を通すことはありますので、そういったときに、法学者としての立場を知っておくことは参考になるかと考えました。
 
それに関する記述もあり、私の解釈では、縁の下の力持ち的なポジションであり、法的な事項について考えるときの基盤となる方向性を示してくれるものと感じました。
 
P.50: 研究者の意義は、「世の名の事象に俯瞰的・統一的な見通しを与えることではないか」
 
P.234:自分の力量からすると、学者は光を与えるのもので、~原則として論文で勝負をすべきであり、~
 

2.理論と実務のバランス

法学者としては、実社会を知ることはもちろん重要であるが、だからといって実務の追従だけではいけない。そのようなときでも、自らの立場を忘れず一貫性をもって行動することが大切だと感じました。
 
P.120:特にデジタル時代においては時代の要請に即した考えが必要である
 
P.124:最大のコンプレックスは、実務を知らないということでしたので、進んでエンジニアや特許庁の技官とお付き合いをするようにしました~
 
P.164:営業秘密の保護のように機微にわたる問題の立法は、一挙に完成形を目指して結局失敗に終わるよりは、気を長くもって完成形を成し遂げることの重要性を認識いたしました。
 
P.187:知的財産法のようなビジネス・ローにとっては、理論ばかり先行しても現実社会では通用しないということを身をもって知りました。しかしただ実務に追従しているのでは、学者としての存在価値はなくなります。実務にも大いに目を配りつつ、それを認識した上で理論化し、将来に目を向けることが重要であるとると痛感しました。
 

3.教育と勉強会

社内でも、リーダー的な立場でのマネジメントはどのようにやったらいいのか。また、数名のグループで勉強会を企画したいといったことがたまにあるのだが、どのように開催するのが効果的か。といったことについて難しいと思います。
 
本書は、法学者の方の研究者の育成等の話であったが、ヒントとなる記載があり、非常に参考になりました。
 
P.42:能力ある人であれば、~良い研究環境を整えてあげることにより、自ら学問を切り開いてゆく
 
P.48:学問は教えてもらうものではなく、師の背中を見て盗み取るもの~弟子にはやりたいことを自由にやらせる~
 
P.142:内部研究会も行い、各自が自分の研究していることを報告し、皆で揉んでもらうということもしておりました。1人で悩むのではなく、他の研究者から異なった視点で指摘してもらうということは、論文や評釈を書くうえで大いに役に立ったのではないかと思います。
 

4.まとめ

物事を考えるときは、様々な視点から見ることが必要となるが、そういったとき、学者だから見えること、実務家だから見えることがあると思う。多様な考えを否定的に見るのではなく、様々な視点を考慮しつつ意思決定していくこが大切だと感じました。
 
また、社内では、いろいろな意見がでて判断が難しいこともあるが、自分のポジションをしっかりとってリーダーシップをとっていけるようにしようと思う。効果的な勉強会も考えていきたいです。
 
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